フィナステリド

フィナステリドはAGA(男性型脱毛症)と前立腺疾患の改善効果が認められている成分です。
世界初のAGA治療薬としてプロペシアという名称で販売されて、2015年の特許切れ以降も多くのジェネリック医薬品と共に使用され続けています。
前立腺がんや前立腺肥大症などの悪化を抑える前立腺の治療薬としてはプロスカーという薬が販売されていますが、こちらは日本で承認されていません。
フィナステリドは、脱毛作用や前立腺の肥大を招く悪玉男性ホルモン「ジヒドロテストステロン」を生産する5αリダクターゼを阻害する働きがあります。
これにより、抜け毛を減らして毛髪の質を上げるAGA改善効果と、前立腺疾患の治療が可能です。
フィナステリド配合のAGA(男性型脱毛症)治療薬は世界60ヶ国以上で承認されていて、その優れた効果から多くの専門機関で処方されています。
フィナステリドの禁忌事項
フィナステリドの禁止項目は多くありませんが、以下に該当する方の使用は危険です。
- 過去にフィナステリド配合薬で過敏症を起こした
- 妊婦、授乳中の女性
以前フィナステリドの含まれた薬剤を飲んでアレルギーや蕁麻疹、発疹、全身のかゆみなど過敏症が出たことがある方は服用できません。
軽度であっても、二度目以降の服用でより強い症状が現れる可能性があります。
また、フィナステリドは女性の投与を目的としていない成分です。
妊娠している場合、フィナステリドの摂取により男性胎児の外性器に発達異常がでるリスクが高いとされています。
妊娠の可能性がある場合も服用しないでください。
授乳中も母乳にフィナステリドの成分が移り乳児に悪影響を及ぼす危険があります。
命に関わることもありますので、服用してはいけません。
なお、禁忌事項ではありませんがフィナステリドの服用中は献血できません。
成分の血中濃度の都合上、最低でも1ヶ月間ほど休薬期間をとる必要があります。
フィナステリドの効果
- 男性型脱毛症の薄毛抑制、前立腺疾患の改善
男性の頭皮に対して作用し、前立腺の肥大を抑え縮小させます
フィナステリドは抗アンドロゲン薬の一種で、脱毛作用の抑止や前立腺がん、前立腺肥大症などの治療に使われます。
1991年に開発が始まり、1992年に前立腺肥大治療薬として5mg錠のプロスカーが発売されました。
その後の研究で1mg用量がAGA(男性型脱毛症)に対する有効性が発見され、1997年にAGA治療薬として認可されました。
脱毛や前立性疾患の原因となるジヒドロテストステロンという男性ホルモンは5αリダクターゼによって成されますが、フィナステリドは5αリダクターゼを抑制して根本原因を排除します。
ジヒドロテストステロンが生産されなくなることで、抜け毛が減少し十分な髪の成長を促せるため毛髪の状態を太く丈夫にできます。
さらに服用を継続すれば、ヘアサイクルも正常になるため安定した太い毛髪を育てることができ髪全体が豊かになっていきます。
なお、フィナステリドは女性には適応がありません。
男性であっても、AGA(男性型脱毛症)と診断される頭皮以外の脱毛症には効果がありませんので、別箇所の治療には使えません。
フィナステリドの脱毛抑制効果
フィナステリドがAGA(男性型脱毛症)の改善に有効なのは、抜け毛を促す酵素5αリダクターゼの抑制作用があるためです。
男性ホルモンには筋肉増大や骨格の発達に重要なテストステロンがありますが、5αリダクターゼ(5α還元酵素)はテストステロンを悪玉男性ホルモンと呼ばれるジヒドロテストステロン(DHT)に変える働きがあります。
テストステロンと5αリダクターゼが結合してできたジヒドロテストステロンは、毛根内にある毛母細胞に到達すると毛乳頭細胞と合成されます。
毛乳頭細胞は毛母細胞を増やし毛髪の成長を進める役割がありますが、強い作用を持つジヒドロテストステロンと結びつくと、毛母細胞の分裂を阻害するようになります。
加えて過剰な皮脂の分泌も促すため、毛髪にとっては害のある作用といえるでしょう。
毛根を形作る細胞が増やせなくなると毛髪の成長は止まり、その結果ヘアサイクルが短くなることで毛包という毛根を包んでいる組織が収縮して髪が十分伸びなくなります。
毛髪の成長期間が短くなれば抜け落ちる速度も速くなり、軟毛と言われる細く柔らかい毛髪が少しずつ増えていき、髪全体のボリュームがなくなる薄毛を引き起こします。
フィナステリドは、この髪の軟毛化現象を誘発する2型5-α還元酵素、およびジヒドロテストステロンを直接阻害する作用を持っています。
フィナステリドのAGA(男性型脱毛症)改善結果は98%
フィナステリド配合薬は1997年にアメリカで既に発売されていましたが、日本では2002年から3年にわたって綿密な臨床試験がおこなわれました。
対象者はAGAを患う男性で、治験の結果、投薬による脱毛減少と薄毛の進行抑制効果と、毛髪量の成長を正常値に戻し量を増やす効果が認められています。
フィナステリドの服用により脱毛が止まり発毛効果のあった患者の割合は、1年後は58%、2年後では68%、3年後には78%と時間経過で高くなっています。
薄毛の進行抑制については、フィナステリドを飲んだ男性のうち98%に効果が見られました。
また、増毛効果があっただけではなく長さや太さといった髪質も改善され、頭頂部から髪の生え際まで効き目が得られる点も確認されています。
フィナステリドが配合されたAGA(男性型脱毛症)治療薬は、先発薬であるプロペシア以外にも後発薬がいくつか開発・販売されています。
フィナステリドの前立腺疾患に対する改善効果
もともとフィナステリドは前立腺疾患の治療薬として開発された成分です。
臨床試験は4年間、30〜40歳の前立腺肥大症を持つ男性を対象におこなわれました。
治験では、フィナステリドの投与を始めて1年後に排尿障害が改善されたというデータが残っています。
また、試験開始前と比較して前立腺の大きさが17.9%ほど縮まり、1.9ml/秒ほど尿量に増加しています。
前立腺がんの予防試験についてはフィナステリド5mg錠とプラセボ錠が用いられましたが、25%ほど前立腺がんの進行抑制効果があることが分かりました。
悪玉男性ホルモン、ジヒドロテストステロンは毛根の毛母細胞だけではなく前立腺の受容体とも結合して、前立腺の肥大やがん細胞の増殖を招きます。
どちらも重い疾患ですが、早期発見とフィナステリド服用で早いうちに症状改善が可能です。
前立腺肥大症の治療薬は、先発薬プロスカーの他には後発薬フィンカーがあります。
フィナステリドの副作用
- 過敏症(発疹、全身のかゆみ、アレルギー、口唇腫脹、顔面浮腫など)
- 下痢
- 胃の不快感
- リビドー減退
- 性機能低下(勃起不全、射精障害)
- 肝機能障害(※重篤な副作用)
性機能の低下は、フィナステリドの男性ホルモン抑制効果による症状です。
ただしリビドー(性欲)減退の発症率は1.1%で、ED(勃起不全)は0.7%ほどですので、ほとんどの方に副作用が出ることはありません。
副作用の発症率は低いフィナステリドですが、ごく稀に肝機能障害につながることがあります。
身体に異常を感じた場合は、すぐに服用を中止して医師の診察を受けてください。
フィナステリドの注意事項
- 肝機能障害を患っている人
肝臓の機能障害を治療している、もしくはその疑いのある方はフィナステリド錠の使用に慎重を要します。
薬の成分は肝臓で分解・代謝されますので、機能低下による体外への排出が正常におこなわれず血中濃度が過剰に高くなる懸念があります。
併用注意薬は特にありませんが、常用している薬があり不安に感じる方は医師に相談してからフィナステリドを服用しましょう。