シルデナフィル

シルデナフィルは、ED(勃起不全)や肺動脈性肺高血圧症の治療薬に配合されている成分です。
ED(勃起不全)治療薬としては世界初のED治療薬「バイアグラ」、肺動脈性肺高血圧症の治療薬としては「レバチオ」が販売され、現在では開発元ファイザーの特許切れによって多くのジェネリック医薬品が売られています。
ED治療薬のシルデナフィルは、勃起を沈静化する物質を抑止すると同時に血管拡張効果で陰茎への血流を促し、正常な勃起を導く効果があります。
経口摂取により30分程度で吸収されますが、性的興奮がなければ発現しません。
飲むだけで強い勃起効果を得られる成分ですが、利用する際には副作用や禁忌事項も少なくないことを覚えておく必要があります。
シルデナフィルの禁忌事項と併用禁忌薬
シルデナフィルは心血管系に強力に作用する成分です。
そのため、使い方を誤ると命の危険につながる恐れがあります。
- シルデナフィルの服用で過敏症の既往歴がある
- 脳梗塞や脳出血、心筋梗塞を半年以内に起こした
- 心血管系の持病から性行為を止められている
- 重度の肝機能障害を持っている
- 低血圧症
- 未治療の高血圧症
- 網膜色素変性症
過去、シルデナフィルが配合された薬によってアレルギーやアナフィラキシーなど過敏症が現れたことがある人は利用できません。
脳梗塞、脳出血、心筋梗塞を半年以内に発症した方もシルデナフィル製剤の服用はできません。
心血管系障害の疾患・持病を持っていて医師から性行為を禁止されている場合も同様で、急激に血流をあげるシルデナフィルが性行為時の心臓や血管へ負担を増幅させるリスクがあります。
突然の血圧変動を避けなければいけない低血圧や、適切な治療がなされていない高血圧を患っている場合も、シルデナフィルの摂取は大変危険です。
また、肝硬変や急性肝炎など重度の肝機能障害を抱えている方も、シルデナフィルの作用が悪影響に変わるリスクが高くなります。
通常、吸収した成分は肝臓で分解され体外に排出されますが、障害により肝機能が働かなくなると血中のシルデナフィルの濃度が高くなり適度な効果が得られなくなるためです。
網膜色素変性症は遺伝性の網膜疾患ですが、罹患者の一部にPDE6のβサブユニット遺伝子異常を有します。
シルデナフィルの重い副作用に視覚障害の発症があることと、PDEにどのような作用をもたらすかの安全性が確認されていないことから使用が禁止されています。
シルデナフィルの併用禁忌薬
- 硝酸剤か一酸化窒素供与剤(ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビドなど)
- アミオダロン塩酸塩(経口剤)
- sGC刺激剤(リオシグアト)
ニトログリセリン、亜硝酸アミルなど、狭心症や心不全の治療薬として使用される硝酸薬、一酸化窒素供与剤と併せて飲むと血圧の急な低下を招くことがありとても危険です。
アミオダロン塩酸塩は再発性不整脈に使われますが、シルデナフィルとの併用でQTcの延長も考えられるため同様に禁止されています。
また、肺高血圧症の治療薬であるsGC刺激剤(リオシグアト)も、低血圧が引き起こされることがありますので、自己判断で併用することはしないでください。
シルデナフィルの効果
- ED(勃起不全)の改善
通常通りの勃起を促し維持させる効果があります
シルデナフィルの正式名称はシルデナフィルクエン酸塩です。
摂取から1時間程度で吸収され、勃起を鎮める物質のコントロールをした上で陰茎への血流を増幅し、正常な勃起を導き維持することができるようになります。
勃起を維持するだけではなく硬度を保つ働きもありますので、中折れを防止することもできます。
精神的ストレスが原因の心因性EDと、心血管系など身体の問題である器質性ED、もしくはそのどちらでもある混合性EDのいずれにも効果が認められています。
服用後は約5時間ほど効果が持続し、満足のできる性行為を実現します。
脳神経系に作用する成分ではありませんので、性欲増進などの効果はありません。
バイアグラやそのジェネリックなどシルデナフィル製剤は、あくまで性的刺激を受けた際に勃起を促します。
シルデナフィルが効いている間であれば性的興奮で勃起しますが、刺激がなくなれば徐々に収まっていきますので、負担がかかることもありません。
シルデナフィルは世界初のED(勃起不全)改善効果が認められた成分ですが、当初は狭心症の治療に役立てるため研究されていました。
狭心症の薬として効果が薄かったため研究は中止されましたが、被験者が余った試験薬の返却をしたがらなかったそうです。
その理由を確認したところ、わずかながら勃起を促す効果が認められED(勃起不全)治療薬としての開発が進められる事になったという経緯があります。
その後数年の研究開発を経て、1998年にアメリカで世界初のED治療薬「バイアグラ」が販売されました。
それまでのED治療ではカウンセリングや陰茎の薬剤注射がおこなわれてきましたが、服用で効果が得られるバイアグラは夢の薬として世界中に広がりました。
現在ではバルデナフィル(レビトラ)やタダラフィル(シアリス)などED(勃起不全)治療に有効な薬も販売されていますが、シルデナフィルは今でも強力な治療薬として世界中で使われています。
シルデナフィルの働き
シルデナフィルは、陰茎で勃起をおこなうのに必要な環状グアノシン一リン酸(cGMP)を分解するPDE-5(ホスホジエステラーゼ5)を抑制し正常な勃起をさせる作用を持ちます。
cGMPは陰茎の血管を拡張させる物質で、PDE-5は性的興奮が収まったのち血管を収縮させる酵素で、どちらも勃起に必要な要素として欠かせません。
男性の体は性的刺激が脳に伝わると、陰茎の血管でcGMPの生産量を増やしていき、刺激の減退や時間経過によって勃起状態を収めるPDE-5を分泌させます。
これが通常の勃起のメカニズムですが、何らかの異常によりPDE-5が過剰分泌されることで、勃起ができなくなったり十分な硬度を得られなくなるのがED(勃起不全)です。
シルデナフィルによりPDE-5の生産がコントロールされることでcGMPの分解が抑えられ、陰茎の血流が改善し海綿体が膨張します。
そのような仕組みで、勃起に必要な硬度と時間を維持が可能になります。
シルデナフィルのED(勃起不全)改善効果は72%
シルデナフィルのED(勃起不全)に対する効果は、3種類の配合量別の錠剤を用いての比較と検証で有効性が認められています。
臨床実験においては、EDを患って3ヶ月経過した数十人の男性を対象に、25mg、50mg、100mgのシルデナフィル製剤を使用して勃起不全にどのような効果があるか確かなデータが集められました。
その結果、シルデナフィル50mg配合、あるいは100mg配合された製剤に72%のED(勃起不全)改善効果があることが実証されました。
25mg配合された錠剤を飲んだグループの改善率は58%ですので、どの成分量でも68%ものED患者に効果があるということになります。
日本人男性の場合、体格や体質の違いからシルデナフィル製剤の服用量は最大50mgとされています。
持病や服用にあたっての注意事項がなければ、50mg錠でより高い効果が得られるでしょう。
なお、シルデナフィルが含まれるバイアグラはED治療薬の筆頭として人気が高いですが、値段が安くタブレット錠やゼリータイプ、発泡錠などさまざまな形を選べるジェネリック医薬品を利用する人も多くいます。
早漏防止効果を持つダポキセチンとシルデナフィルが一緒に配合された治療薬だけではなく、女性の不感症治療薬である女性用バイアグラも開発されています。
シルデナフィルの副作用
- 頭痛
- ほてり
- 潮紅
- 鼻づまり
- めまい
- 胸焼け
- 血圧の急な変動
- 動悸
- 頻脈
- 不整脈
- 興奮
- 無気力
- 記憶力低下
- 疲労
- 筋肉痛
- 胃腸の不調(下痢、消化不良、胃部不快感、便秘、腹部膨満感)
- 乾燥(皮膚の乾燥、口唇乾燥、皮膚のかゆみ、眼瞼のかゆみ)
- 睡眠障害(傾眠、不眠症)
- 視覚異常(彩視症、光視症、眼球充血、霞目)
- 陰茎の異常(痛み、半勃起持続、射精障害)
シルデナフィルは全身の血管を弛緩させる作用を持ちますので、頭痛やほてりが比較的多い副作用として報告されています。
シルデナフィル製剤の服用による頭痛は12.74%、ほてりは10.19%となっています。
鼻の血管が拡張することで鼻づまりを引き起こすこともありますが、これらの症状は2〜3時間ほど経てば治るほど軽微なものです。
他には動悸、胸焼け、消化不良などが引き起こされることもありますが、いずれもED(勃起不全)改善効果があるために起こる一時的な症状です。
稀に見られる副作用として、4時間以上勃起が収まらない「持続勃起症(プリアピズム)」や、視界が青く見える視覚異常があげられます。
視覚異常の場合はほとんどが一過性のものですが、視力の低下を招く非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)の危険性もありますので、急激な視力低下や視力喪失が現れた時は、ただちに眼科での診察を受けましょう。
持続勃起症(プリアピズム)のケースでは、放置していると陰茎に異常をきたし勃起できなくなるリスクもありますので、こちらもすぐに専門医の診察を受けるようにしてください。
シルデナフィルの注意事項
ED(勃起不全)改善効果が高いシルデナフィルですが、注意事項も多くあります。
誤った服用で命に関わることもありますので、使用前に確認してください。
- 使用に注意がいる人
- 65才以上の高齢者
- 他のED治療薬を服用中の人
- 自動車の運転や機械の操縦をする人
- 陰茎に構造上欠陥(屈曲、陰茎の線維化、ペイロニー病など)がある
- 鎌状赤血球性貧血や多発性骨髄腫、白血病
- 出血性疾患又は消化性潰瘍がある
- 重度の腎障害がある
- 肝障害を患っている
- 多系統萎縮症(シャイ・ドレーガー症候群など)がある
高齢者は血漿中濃度が増加するため、血液中の成分を排出する機能低下によりシルデナフィルが悪影響を及ぼす危険があります。
使用する場合は、低用量から始めてください。
他のED治療薬との併用で効果が倍増することもありません。
反対に悪い相互作用を起こして血圧の急変を起こすこともありますので、併用はできません。
陰茎の構造に不具合がある場合も、性行為が困難であり痛みを伴う可能性があります。
鎌状赤血球性貧血や多発性骨髄腫や白血病を患っている人は、持続勃起症の起因となるリスクも存在します。
出血性疾患または消化性潰瘍はニトロプルシドナトリウム(NO供与剤)の血小板凝集抑制作用を増幅させることが分かっていて、併用した場合の安全性が確認されていません。
重度の腎障害、および肝障害を持つ人においては血漿中濃度の増加が確認されています。
多系統萎縮症のある人には、血管拡張作用による低血圧の悪化のリスクも報告されているため慎重に使う必要があります。
- 併用に注意がいる薬剤
- 降圧剤
- カルペリチド
- チトクロームP450 3A4阻害薬
- チトクロームP450 3A4誘導薬
- α遮断剤
アムロジピンなどの降圧剤は、高血圧の治療に用いられ降圧作用を増加させる治療薬です。
また、カルペリチドはシルデナフィルと同じ血管拡張作用のある薬剤ですので、併用により降圧作用をより高める危険性があります。
チトクロームP450 3A4阻害薬はケトコナゾール、イトラコナゾール、リトナビル、サキナビル、ダルナビル、エリスロマイシン、シメチジンなどがあり、抗生物質や抗HIV薬、抗真菌薬など多くの薬に使われています。
代謝に影響するためシルデナフィルの血中濃度を濃くする弊害があります。
逆にボセンタン、リファンピシンなどチトクロームP450 3A4誘導薬は、代謝酵素を増やす働きから、シルデナフィルの血中濃度を低下させる可能性をはらんでいます。
α遮断剤は降圧剤の一種で併用により血圧低下をもたらし、めまいなどを引き起こす場合もあります。
副作用を悪化させる要因にもなるだけではなく生死に関わることもありますので、シルデナフィルを服用したい場合は医師に相談した上で、適切な指示のもと使うようにしてください。